斜め上からナスコ

言わなくてもいいことを言いたい

はじめに言っておきますが、今回は例の件を受けてシャーロック・ホームズのリメイクついて5000字語ります。

 

 

 

「あなた、アフガニスタンに行ってきましたね」

 

 

アフガニスタンイラク?」

 

 

「あなたは・・・シリアから戻ったばかり」

 

 

 

 

 

シャーロック・ホームズファンなら誰もが興奮を禁じ得ない、ホームズとワトソン初対面のシーン。

シャーロック・ホームズシリーズはこれまでに多く 実写ドラマ化、映画化されてきました。この三つの台詞は、それぞれの作品でホームズが、初めて出会ったドクターワトソンに対して放つ一言です。

 

世界を代表する名コンビ誕生の瞬間など、説明するまでもないことだとは思いますが。コナン・ドイル著「シャーロック・ホームズ」シリーズは、軍医としてアフガニスタンに駐在していたジョン・ワトソンが負傷し、帰国したロンドンで、奇妙な探偵シャーロック・ホームズと出会い共同生活を始めるところから物語が始まります。ホームズが難事件を次々と解決していく様を、ワトソンが記録するという形をとった物語です。

 

 

 

さてこの三つ。ホームズは初対面のワトソンを一目見ただけで、最近帰国した人であること、しかもどの国から帰ってきたかまで言い当ててしまうのです。それぞれどの作品のホームズが語った台詞でしょうか?

 

 

余談ですが、記憶に新しい映像作品ですと、ロバート・ダウニー・Jrジュード・ロウで映画化された「シャーロック・ホームズ」「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」がありますね。残念ながらこの作品については今回の記事では一切触れません(笑)どうもアレにだけは興味が湧かなくて・・・ホームズがワイルドすぎるのと、アクションメインのイメージがあるので、原作的な古風かつ上品なイメージとかけ離れてしまっていてわたし的にはあまり好みではありません。わたしが好きなのは、グラナダテレビのドラマシリーズですね。ザ・ホームズというか。小説からそのまま飛び出してきたような二人ですよね。わたしはあれが映像版の本家と思ってます。

 

 

 

 

さて、冒頭の台詞の答え合わせにいきたいと思います。

 

一つ目、「あなた、アフガニスタンに行ってきましたね」

これは、原作通りのシャーロック・ホームズの言葉です。雑に握手を交わした後、この一言でワトソンを驚かせます。

 

 

お次は、アフガニスタンイラク?」

初対面にしては不躾なこの質問。現代版シャーロックホームズの金字塔となったBBCドラマ「SHERLOCKより、ベネディクト・カンバーバッチ演じるホームズが、ワトソンの顔も見ずに放った言葉。ワトソンは懐疑的な目でホームズを見つめます。

 

 

 

そして三つ目、「あなたは、シリアから戻ったばかり」

そう、これは・・・

 

 

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ミス・シャーロックの言葉です!!

 

 

 

女!?女版シャーロックってどうよ!?

自称にわかシャーロキアンであるナスコは思わず声をあげました!!!

 

女版って、初なんじゃないでしょうか?わたしが知る限りでは見たことがありません。

 

BBC版の数年後にアメリカで製作された、現代版シャーロック・ホームズ「エレメンタリー」では、ワトソン役を女性(ルーシー・リュー)が演じるという、ホームズ史上 前代未聞の事態が発生したんですが、男女コンビでシャーロック・ホームズをリメイクするなどわたしにとっては言語道断でした。最近、民放で放送されたりしてますが、わたしは一切観てません。そもそも、ホームズが女癖悪いだとかセックス依存症だとかそんな設定を聞いて、もうその時点で、原作をぐにゃぐにゃに捻じ曲げてる時点で既にありえないから。って思って観てません。そんなチャラいホームズには魅力のかけらもありません。

 

 

さて本題に戻ります。ミス・シャーロック。

女版シャーロックという未知の世界に怯えながら、ナスコは拝見致しました・・・

 

第一印象は・・・「孫感」

は?と思った方は正しいです。こんな言葉、どの辞書にも載ってませんのでご安心を。

 

この説明をする前に、わたしの大好きなリメイク作品「SHERLOCKについて知ってもらいたいと思います。2010年、現代版シャーロック・ホームズのドラマができたと聞いて、度肝を抜かれたシャーロキアンは多いはずです。シャーロック・ホームズといえば、パイプ、ステッキ、シルクハット、そして鹿討帽。19世紀のロンドンの石畳の道を馬車で疾走する姿。これこそが時代を超えて愛されてきたホームズのイメージでした。そんなホームズが、スマホを操り、パソコンと向き合い、禁煙に努め、地下鉄とタクシーを乗り継いでロンドンの街を駆け巡る。そして挙げ句の果てには、相棒のことを「ジョン」と呼ぶのです。初めて聞いた人にとっては、「そうか、ワトソン君のファーストネームってジョンだったんだよな」レベルの話ですよ。もちろん、そのジョンも自分の相棒を「シャーロック」と呼ぶのです。

 

現代版ってどうなんだろう。だれもが感じた違和感と好奇心。当時は未知の世界でした。NHKBSプレミアムで初めて日本で公開された「SHERLOCK」を観たわたしは、一瞬で虜になってしまいました。それは原作通りでした。ただ舞台が現代になっただけなんです。たったそれだけの違い。その違いは大きいはずなのに、その大きさを全く感じさせないごく自然なシフトチェンジが実現されたのです。ホームズ史に革命が起きたと思いました・・・。もちろん納得いってないシャーロキアンもたくさんいたとは思いますが、世界中で絶賛されたことは確かです。むしろこの作品きっかけで原作に興味を持った人もいるんじゃないかと思います。

 

このシフトチェンジが可能になったのは、このドラマの監督と脚本家が超絶猛烈ホームズファンだからなのだと思います。物語が本当に細かいところまで原作に忠実で、それを踏まえた上で敢えてちょっとだけオリジナルから外してみたりと、遊び心も散りばめられています。原作マニアであればあるほど、楽しめるようになっているのです。そしてもちろん現代版ならではの展開もあります。二人がショートメールをやり取りすることもそうですし、ワトソンの手記はブログに。極秘データやサイバー攻撃を巡って起きる事件もあります。それでもシャーロック・ホームズの天才ぶりは全く褪せることがありません。彼の観察力と記憶力と推理力は健在で、これほど科学が進歩した情報社会であっても、あくまでホームズ自身が事件を解決へと導いていくのです。(無論、事件も捜査も19世紀よりはずっと複雑化しているわけですが)

 

この作品によって、現代版シャーロックという新しい道が確立されました。原作の実写化ではなく、現代版という新しいジャンルが作り上げられたといっていいと思います。つまり原作が親だとするならば、これは原作の子供だと思うのです。

 

 

そして数年後、現代版という大前提のもとに新たな試みに挑んだのが「エレメンタリー」。時代チェンジをクリアしたならば次は性別にトライしよう、ジョンを女にしちゃおう、ジョンじゃなくてジョーンにしちゃおうってわけです。でもってついでに国もいじって、ロンドンじゃなくてニューヨークにしちゃおうという、これまた大胆な設定が生まれたもんです。「エレメンタリー」の監督がどこまでシャーロキアンで、内容がどこまで原作に忠実なのかは知りませんが・・・

 

言うなればこれは、現代版シャーロック・ホームズという親の元に生まれた子供、つまり原作から見れば孫にあたるという理論になるのです。

 

 

そして今回の「ミス・シャーロック」。

これもまた現代版という大前提のもとに、設定を作り上げていきます。ジョンを女にすることに成功したから、今度はシャーロックも女にしちゃえっていう試みです。そんでもって今度は日本人にしちゃえ。まだアジア人でやったことないし。っていうこれまた大胆な・・・そもそもジョン女化&アメリカ化が成功したかは不明ですが、エレメンタリーもシーズン3くらいまで?好評で続いてるみたいだからまぁ成功と言ってやってもいいだろう。(誰だよ)

 

(まぁわたしに言わせれば、ドラマ「相棒」が既に隠れリメイク、現代日本版シャーロックホームズだったと思うのですがね・・・リメイクではなくてオマージュというんですよね。その話を始めると長いのでやめておきます。)

 

ということで、「孫感」の意味がわかっていただけたでしょうか?

 

「エレメンタリー」も「ミス・シャーロック」も、現代版シャーロックという新しいジャンルの遺伝子を受け継いだ、原作の孫作品ということを言いたかったわけです。今振り返ったら、至極当然なことをなに時間かけてとうとうと語っているんだ?という気分になりましたが・・・

 

しかし一つだけ言っておきたいのは、原作であろうと現代版であろうと、シャーロック・ホームズ作品全てに共通して流れているべき「血」は、「事件の奇怪性」だということです。誰も聞いたことのない、その時代の最先端を行く事件を解決へ導く天才シャーロック・ホームズでなければならないというのが、鉄の掟です。

 

 

 

冒頭の台詞からおわかりのように、今回のワトソンはシリアから戻ってきました。医療ボランティアでシリアに行っていたものの、現地の過酷な現場に自分の医師としての無力さを感じていた頃、軍事活動の活発化に伴って帰国を余儀なくされ日本へ。空港で再会した尊敬する先輩医師が、突如腹部を爆発させて死んでしまうという怪事件から物語がスタートするのです。

 

原作でも「SHERLOCK」でも、シャーロックがルームメイトを探していてそこにジョンが現れるという設定なのですが、今回は事件が先に起きて、最後になんやかんやあって一緒に住めば?みたいな展開になっちゃうんですよね・・・雑だなあ・・・なんやかんやあって感が少女漫画のそれじゃん。女同士だから成り立つのかな?うーん、ちょっとそこだけが腑に落ちないなあって感じですね。

 

ワトソン(作中の名前は、橘和都)が初めてシャーロックの家 221Bを訪れるシーン。シャーロックの部屋は、ベネディクト演じるシャーロックの部屋にどことなく似ています。(冷蔵庫の中にはヒトの顔があるかも・・・。)シャーロックはなにか閃くとすぐに行動します。まだ会話の途中だというのに部屋を出て行こうとするシャーロック、それを引き止めて「わたしも同行します」と申し出るワトソン。対してシャーロックはいたずっらっぽく「それは真相究明のため?それとも好奇心?」と聞くのです。ワトソンは真相究明のためだと言い張りますが、シャーロックは意味ありげな笑みを浮かべます。

 

これもまさに現代版「SHERLOCK」のオマージュ。「SHERLOCK」でも同じようなシーンがあります。そもそも原作での、純粋で冷静で平凡な常識人というワトソン君のイメージ像を少しだけ変えたのは、「SHERLOCK」に登場するジョン(マーティン・フリーマン演)です。確かにジョンは常識のある真面目な人間ではあります。しかしシャーロックはその心を見抜いている。本当は好奇心の塊で、冒険が大好きで、奇妙なもの怖いものが見たいという欲求、シャーロックと似た何かを持っていることを。このジョンを見て、こいつも本当はけっこうな変人なのでは?と思った視聴者も多いはずです。

戦地でメンタルを痛めたジョンは、帰国後しばらく精神安定のために松葉杖をついているのですが、シャーロックは、「そんなもの君には必要ない」「君は今でもスリルを求めている」「僕と冒険しないか?」と、唆かすのです・・・。

 

 

BBCの現代版シャーロックの子として、新たに生まれた女版シャーロックin TOKYO「ミス・シャーロック」。もしかしたらこの作品が、女版ホームズという新常識、新ジャンルを生み出す歴史的第一歩となってしまうのかもしれません・・・。第2話も楽しみにしたいと思います。

 

あ、そうそう。配役も今のところいい感じだと思います。竹内結子は奇人っぷりが似合うし、貫地谷しほりはなんでもできるから大丈夫。レストレード警部は礼紋警部に名を変えて、滝藤賢一さん。滝藤さん好きだから嬉しい。けどあのクルクル頭がどうもベネディクト・カンバーバッチを彷彿とさせて刑事っぽくないから残念だなぁ。さっそくお兄ちゃんが登場して嬉しい驚きでしたけど、マイクロフトのどっしりした安心感に小澤さんぴったりです!お姉ちゃんじゃなくてよかったー。そこまで女だったらなんか息が詰まりそうだもんな。で、ハドソンさん=伊藤蘭!これ素晴らしい!ハマり役。伊藤蘭とか和製ハドソンさんだもんな。なんで今まで気づかなかったんだろ。といってもね、原作のハドソンさんというより、「SHERLOCK」のハドソンさんに近いんだけどね(知らんがな うるさいオタクめ)

 

最も気になるのは、モリアーティ教授が誰かってことですね。もしや女!?きゃー!

楽しみです。

 

 

 

 

うひゃー!語ってもうた・・・