斜め上からナスコ

言わなくてもいいことを言いたい

花見に行ったら終末の世界だった

 

 

 

公園のベンチに座って2時間ほど経った。イヤフォンからは、お気に入りの一曲が繰り返し流れている。もう何回目のイントロだろうか、数えるのをやめてしまった。


目の前に広がるのは大きな池、池の周りに植え込まれた桜の木々、池に浮かぶ鳥の群れ。対岸の遊歩道を歩く人々。熱くも冷たくもない風。


音や匂いは、記憶と密接に関係している。2時間もの間ずっと同じ曲をリピート再生していたから、次にこの曲を聴くときは、この春空の下の風景を思い出すだろうか。いや、思い出さないだろう。そもそもこの曲を、もう聴くことはないだろう。

 

 


目の前を鳩が通過していく。背後で幼子が走り出して、地面が振動する。鳩は飛び立つ。風が吹いて花びらが舞い上がる。草がサラサラと鳴る。

 


ゆっくり歩いていた老婆が、ふと立ち止まり、曲がった腰と顔を持ち上げ、頭上の桜を黙って見つめる。桜の木を背景に子供の写真を撮る嬉しそうな両親の顔。リュックを背負った初老の男は、黒く光る自慢のカメラを桜に向け、片目を瞑ってレンズを覗く。母親は突然顔を塞いでしゃがみこみ、幼い子供が無邪気に木の陰へ走り出す。十まで数えた母親は、おどけた顔を見せて歩き回る。初々しい若いカップルがバトミントンしている。彼が空振りをして、彼女が笑っている。ちゃぷんと水の音がして、水亀が水面に顔を出す。


わたしはひたすら同じリズムをかかとで刻む。肩に舞い降りた桜の花びらは、そのままにしておく。

 


誰も下を向かない。誰も急がない。誰も、何にも囚われない。

 


明日この世界が終わると知っているから。

 

 

 

 


・・・みたいな世界が広がってた。今日の昼間花見に行ったら、なんかもう逆に穏やかすぎて終末の風景だった。「週末」じゃなくて「終末」のほうの。

 

コロナの勢い止まらず・・・。

 

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