斜め上からナスコ

言わなくてもいいことを言いたい

月並みの感想ですが

 

 

 

ミッションを果たすため命を懸ける男たちが見たいなら今すぐ映画館へ。

 

サラリーマンが見たいなら「七つの会議」、ホテルマンが見たいなら「マスカレード・ホテル」、

「アクアマン」を見て海に行っても良し、はたまた「ファースト・マン」で宇宙へ行っても良し!!

 

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ライアン・ゴズリング、睫毛なげーーーーーー!!!!

っていうことで「ファースト・マン」観てきました。やっぱりわざわざ映画館に出向くならこういうスケールのでかい、お金掛かってる映画を選ばなきゃね。という、とても映画好きとは思えないケチくさい感想。良かったー。宇宙映画やっぱすごい(語彙力のなさ)ほぼCGのヘタなSFアクションなんかよりずっと迫力あってテンション上がる。といってもこの映画もCG技術の塊だとは思うけれど、ノンフィクションともなるとやはり桁違いのリアリティ。まぁ疲れた。

 

宇宙映画といえば「ゼログラビティ」を観た時もヘトヘトに疲れた記憶があるなぁ。あれも文字通り手に汗握って観ていたもんだけど、今回の「ファースト・マン」はまた全然 趣が違う作品でした。「ゼログラビティ」は作中ほぼずっと1人で宇宙を浮遊して最終的に命からがら生還する話なので、こちらまでずっと宇宙空間にいるような気がしてきて息がつまるのだけれど、今作は今作で何年にも渡る期間の中で何回も宇宙に行くシーンがあるから、それはそれで疲れる。振動がやばい。軽くむち打ちになったもんなぁ。2Dでしたけど。

 

そもそも「ファースト・マン」は事実をそのまま描き出している作品なので、ただのスリル系宇宙映画ではなく伝記的な作品でした。アメリカの宇宙開発の歴史そのものという感じです。いやそこまで言うと大げさかな。とにかくニール・アームストロングという人物とその家族に大きく焦点を当てていて、同時に月面着陸計画の事実と当時の社会状況をそのまま描いているので勉強になりました。結局のところ宇宙開発も一種の戦争で、宇宙飛行士とは国の志願兵なのだなと感じました。素人目から見れば、月に初上陸して半世紀近く経った今になっても、別に月旅行は当たり前になっていないし、月にたどり着いたことで人類が何か大きなメリットを感じているわけでもないのですから、そんなに犠牲者を出してまで慌てて月面に立つ必要はなかったんじゃないかと思ってしまいます。命を懸けて関わった人たちには失礼な言い方ですけどね。でも結局 原動力となってるのは競争心なんだなぁと思ってしまいます。ソ連に負けるわけにはいかなかった。負けないためなら人命もお金も容赦なく注ぎ込むというのが「戦争」ですからね。宇宙戦争ですわ。当時だけじゃなくて今もそうなのかなぁ。

 

 

それにしても学のない現代っ子ナスコちゃんですから、月に初めて行った人の名前なんて知らなかったです。アームストロング?あ、芸人?今は解散して、片割れがとにかく明るい安村さんですよね。とかいうゴミカス程度の知識しかございませんでしたもので、深く深く反省しております。いつも思うんですけど、宇宙飛行士になる人の肉体とか精神力とかってもう、凄すぎて想像できないというか、同じ人間と思えないんですよね。なんかメンタルとかどうなってんのかなとか思ってたんですけど、今回のニール・アームストロングを見て思ったのは、あ、普通の人間なんだ。ってことでした。娘を亡くし、仲間を亡くし、その度に絶望に落とされる。やはりいくら宇宙を相手にしていても、死に慣れなどないのですね。普通の人間、普通の家族が、全く普通じゃないことをしようとしていることに変わりはないのです。

 

 

そしてニールの妻ジャネットの強さたるや。ひょっとしたら妻のほうがニールの100倍メンタル強いかもしれん。自分の夫が自分と子供達を置いて訳の分からない宇宙空間へ飛び出し、あの小さな月の上に乗っかっているなんて想像することもできない。この映画は特に家族の姿がものすごく生々しかったです。ある印象的なシーンは、NASAで地球のお隣の星である月を目指すことついて講師が熱く語っている真っ最中、新居のアームストロング家にはお隣の家の奥様が訪ねてきて、お引越しのご挨拶を交わしているというシーン。両場面が交互に入れ替わる演出が面白かったです。あの対比。お隣同士の2組の家族、いたって普通の家族だけど、どちらも夫や父親を月というお隣の星に送り出さなければならないという普通じゃない状況。強くなる訳よ。アポロ11号が月に経つ前夜の場面も涙なしには観られない。

 

 

とにかく、ライアン・ゴズリング目で演じる男よ。155分の8割が目演技。目俳優。娘が死んだ時の目。宇宙空間で船の高速回転が止まらなくなった時の気を失う寸前の目。仲間の訃報を電話で受けた時の瞬き一つしない目。発射前の船内の小窓から月を真っ直ぐに見つめる目。ところが肝心のシーンで彼の目は映りません。月に自分の足で降りた瞬間や、月面に立ち尽くしている時の表情は映らないのです。なぜならヘルメットで隠れているからです。(眩しくないように真っ黒に塗ってあるので、少しも表情が見えない)

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目すら映らない、顔すら映らなくても彼の表情が手に取るようにわかるのは、それまでの印象的な目演技のおかげ。ゆえに目俳優。アカデミー主演目演技賞があるならダントツで受賞。あと忘れちゃいけないのは睫毛な。超長いよ。船が月面に降りる瞬間の一か八かの緊迫したシーンなのに、ライアンがアップになる度に「睫毛なげ〜〜〜これでも男なん?」とかいう緊張のかけらもない不謹慎なことしか考えていなかったナスコは、宇宙どころか地上で生活してても生命を維持するの危ういと思います。

 

そしてクレア・フォイ。彼女も目で語る役者でした。強さも弱さも目だけで表現してしまう。凄いです。なんといってもラストシーンが圧巻。台詞が一つもないのに、目と表情と動作だけの数分間でこの映画のラストシーンにふさわしいクオリティの感動を完成させている。お涙頂戴じゃなく、計算もない、本当にただ夫婦の自然な姿というか、あんまり言うとネタバレかしら・・・とにかく想像していた再会シーンとは違ったから、おそらくこれがリアルなんだろうなというか。行き先が宇宙ともなると、しかも何度も行った人と何度も送り出した人の立場からするとこういう再会の仕方をするんだなぁと。超越していた。しかしこのあと離婚するんですね、この2人。あれま〜。

 

 

ライアン・ゴズリングクレア・フォイが初共演の割にはあまりにも本当の夫婦にしか見えなくて、おいおいこの2人の演技力どうなっちゃってんだよって思ってたら、どうやら撮影の2,3週間前から、実際に撮影に使う家で共同生活を送って役作りに励んだそうですよ。もちろん子役の2人も含めて。凄いですねぇ。なんせこの「ファースト・マン」は、同監督作品「ラ・ラ・ランド」よりも前から練り始められていたようで、かなり時間かけて作られた映画みたいですから。それしてもデミアン・チャゼルって何者なの!?太鼓の鬼教師映画(言い方)やったと思ったらポップなミュージカルやり、かと思えば今度は宇宙て・・・どこまで手広げんの!?まだ34歳だってさぁ!あと多分だけど「ファースト・マン」の音楽担当した人が「ラ・ラ・ランド」と同じなんだよね。全っ然 雰囲気違ったけど。まぁそんな感じで、とにかくデミアン作品には今後も期待したいと思いました!

 

 

宇宙旅行に疲れ果て、お腹も空いたので帰り道に松屋に寄りました。

空気と音と重力と牛丼があるこの地球の素晴らしさに感謝。